メタバースで「触れる感覚」を実現する技術は、現在も発展途上にありますが、いくつかの方法が研究・開発されています。
大きく分けて、触覚フィードバック技術(ハプティクス) と、間接的な視覚・聴覚による触覚の暗示 があります。
1. 触覚フィードバック技術(ハプティクス)
ハプティクスとは、力、振動、温度、質感など、触覚に関する情報をユーザーに伝達する技術の総称です。
メタバースにおいては、以下のようなデバイスや技術が用いられています。
ハプティックグローブ
手に装着するグローブ型のデバイスで、指や手のひらに振動、圧力、抵抗などを伝えることで、仮想オブジェクトの形状や硬さ、質感を擬似的に感じさせることができます。
例 仮想のボールを握った時に抵抗を感じる、仮想の布の表面のザラザラした感触が伝わるなど。
ハプティックベスト/スーツ
全身に装着するベストやスーツ型のデバイスで、広範囲にわたる触覚フィードバックを提供します。
例 仮想のキャラクターにハグされた時に圧力を感じる、仮想の雨が体に当たる感覚など。
ハンドヘルド型ハプティックデバイス手に持つタイプのデバイスで、振動やフォースフィードバック(力覚フィードバック)を通じて、仮想オブジェクトとのインタラクションを感じさせます。
例: 仮想のボタンを押した時のクリック感、仮想のドアノブを回す時の抵抗感など。
* 超音波ハプティクス: 超音波を照射することで、空中に触覚を生み出す技術です。
まだ研究段階ですが、非接触で触覚フィードバックを提供できる可能性があります。
* 例: 空中に現れた仮想のボタンに触れた感覚、仮想の水の流れを感じるなど。
* 筋電気刺激(EMS): 筋肉に微弱な電気刺激を与えることで、間接的に触覚に近い感覚を生み出す技術です。
* 例: 仮想の物体を持ち上げる際の筋肉の収縮感を擬似的に再現するなど。
これらのハプティクス技術によって、メタバース内で以下のような「触れる感覚」を体験することが期待されています。
* 仮想オブジェクトの把持: 物体を掴む、持ち上げる、押すといった動作に伴う手のひらや指の感覚。
* 質感の認識: 物体の表面の滑らかさ、粗さ、硬さ、柔らかさなどの感触。
* 力の感覚: 物体の重さ、抵抗、反発力など。
* インタラクションのフィードバック: ボタンを押した時のクリック感、ドアを開ける時の抵抗感など。
* 身体感覚の拡張: 仮想空間内での衝突、接触、圧力などを体全体で感じる感覚。
2. 視覚・聴覚による触覚の暗示
直接的な触覚フィードバックデバイスを用いなくても、視覚情報や聴覚情報を効果的に組み合わせることで、脳が触覚を感じているかのような錯覚を生み出すことができます。
* 視覚的フィードバック: 仮想オブジェクトが触れた際に、形状が変形したり、影ができたり、パーティクルが発生したりするなどの視覚的な変化を与えることで、接触感を暗示します。
* 聴覚的フィードバック: 物体が触れ合う音、摩擦音、衝突音などをリアルに再現することで、触覚的な印象を高めます。
現状と今後の展望
現在のメタバースにおける触覚体験は、主に振動フィードバックに限定されていることが多いですが、ハプティクス技術の研究開発は急速に進んでおり、よりリアルで多様な触覚フィードバックを提供するデバイスが登場することが期待されています。
将来的には、高精度なハプティクスデバイスと、視覚・聴覚による触覚の暗示技術が組み合わされることで、メタバース内で現実世界と遜色のない、あるいは現実世界を超えるような豊かな触覚体験が可能になるかもしれません。
これにより、仮想空間でのコミュニケーション、コラボレーション、エンターテイメント、教育、医療など、様々な分野での応用が期待されています。
全世界とのコミュニティ、コミュニケーションも楽しめるようになります。
AI Researcher T.Z.